佐賀町日記

林ひとみ

TEZUKA 2023 ブラック・ジャック

手塚治虫の名作「ブラック・ジャック」の新作が、 連載50周年の特別記念企画として、 週刊少年チャンピオンの11月23日発売号に発表された。 読み切り32頁の「機械の心臓 Heartbeat Mark Ⅱ」は、 天国にいる漫画の神さまのかわりに、 AI と人とのコラボレーシ…

77回目の終戦日

今年の夏は 西瓜と枝豆をよく食べた。 西瓜はほとんど毎日、 枝豆は二日に一度くらい食べた。 食欲のない夜は、よく塩をきかせた 枝豆だけで済ませることも。 そんなとき漫画家・水木しげるさんの 短編「地獄と天国」を思い出す。 現在のパプア・ニューギニ…

人新世の資本論 | 斎藤幸平

10月も中旬をすぎて、 急に寒くなってきた。 からだがびっくりして、 セーターをひっぱりだして羽織ったり、 昨冬の残りのカイロを貼ったり。 朝と夜は、冬の気配につつまれて、 空気が澄んで、星がきれい。 ウイルスもだいぶ落ちついてきて、 東京でも日に1…

くちなし 散骨 半藤さん

ベランダのくちなしの花が咲いた。 楕円形の蕾をみつけたと思うと、 6枚の花弁はたちまちひらいて、 2日ほどであっさりと散ってしまう。 こってりとした香りが漂っている。 5日に咲きはじめて、あっちむいてこっちむいて13花。 6/7の東京新聞と、6/8の日経お…

武器としての「資本論」 | 白井聡

ベランダの鉢植のミントがものすごく元気だ。 北海道美唄のアップルミント。 20㎝くらいのものを3本摘んで、よく洗い、 ティーポットにくるりと巻いて入れて、熱湯を注ぐ。 10分ほど蒸らすと、淡い黄色のきれいな フレッシュハーブティーができた。 よい香り…

ホモ・デウス | ユヴァル・ノア・ハラリ

イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの 「ホモ・デウス」/2018年河出書房新社を読んだ。 前著「サピエンス全史」で辿った人類の来し方につづき、 その行き方の可能性を提示する、上下巻にまたがる大作だ。 「HOMO DEUS : A Brief History of Tomorr…

残暑 首相 サピエンス

2020年の8月も暑かった。 関東甲信越地方では7月から、 環境省と気象庁による熱中症警戒アラートが試行された。 東京も連日35℃近くまで気温が上がり、 昼夜問わずエアコンがなかったらとてもかなわない。 今年はウィルスのこともあるので窓を放ち換気をしつ…

ノヴァセン | ジェームズ・ラヴロック

先日7/26は、天気のめまぐるしい一日だった。 燦燦と陽がさしたと思えば、急に雨が降り出し、 また陽がさして、どしゃ降りになって、、。 山の天気のような早変わりに、窓を開けたり閉めたり。 夕方には、いっとき虹がかかった。 大きな弧の、透明な淡いパス…

ルネ・フレミング インナー・ヴォイス

アメリカのオペラ歌手 ルネ・フレミ ング/Renée Flemingの自伝 「THE INNER VOICE : The Making of a Singer /魂の声 プリマドンナができるまで」を再読した。 冒頭でも語られているように本書は 人生の自伝というよりも声の自伝、 「私がいかにして自分の…

溥儀 | わが半生 「満州国」皇帝の自伝

初夏から梅雨にかけて 溥儀/ふぎの自伝「わが半生/我的前半生」を読んだ。 昨夏に記録映画「東京裁判」を観た際に、 法廷で証言をする溥儀に興味をもったことと、 ベルトルッチの映画「ラストエンペラー」を 再観したことが、きっかっけだった。 愛新覚羅…

魔の山 | トーマス・マン

ちょうどひと冬をかけて、 ドイツの文豪トーマス・マンの 「魔の山/DER ZAUBERBERG」を読んだ。 1924年に発表された全2巻の長編小説は、 スイスの高原サナトリウムでの療養生活を舞台とした 青年ハンス・カストルプの7年間にわたる成長物語であり、 同時に…

W3 ワンダースリー | 手塚治虫

漫画家・手塚治虫/1928-1989の中期の名作 「W3 ワンダースリー」を読んだ。 きっかけは友人の今年の初夢だ。 「今年は手塚治虫の漫画ワンダースリーの 物語の終盤がそのまま夢にでてきた」とのことで、 つづけて物語の概要を解説してもらう。 「ワンダース…

トニオ・クレエゲル | トーマス・マン

20世紀ドイツ文学の大家トーマス・マンの 初期短編小説「トニオ・クレエゲル」を読んだ。 1903年に出版された「TONIO KRÖGER」は、 1901年発表の処女長編「ブッデンブローク家の人々」で 成功を収めた直後、27歳頃に書かれた作品で、 自伝的要素の色濃い、少…

木山捷平 | 井伏鱒二 弥次郎兵衛 ななかまど

木山捷平/きやましょうへいの晩年の短編集 「井伏鱒二 弥次郎兵衛 ななかまど」を読んだ。 備中/岡山出身の木山捷平/1904‐1968は、 終戦間際の1944年12月に40歳で満州へ徴用され、 中国・長春で農地開発公社の嘱託に就き、 ほどなく現地召集をうけて応召…

本 わら一本の革命 | 福岡正信

自然農法の提唱者である 福岡正信の著作「自然農法 わら一本の革命」を読んだ。 自然農法の実践と哲学を 口語体で平易に記述した指南書ともいえる本作は、 1975年に柏樹社より出版され、 1983年に春秋社に引き継がれ、 増版を重ねながら読み継がれている作品…

本 長崎原爆記・死の同心円 | 秋月辰一郎

1945年8月9日に長崎で原子爆弾を体験した 医師・秋月辰一郎/あきづきたついちろうの著作、 「長崎原爆記」と「死の同心円」を読んだ。 福島の原子力発電所の事故以来、 思いがけず人工放射線が身近なものとなり、 ふとしたきっかけで読みはじめたが、 あら…

六等星 

7月10日は参議院選挙の投票日。 選挙公報に目を通すものの、考えがまとまらない。 無性に、漫画家・手塚治虫の 晩年の傑作ブラック・ジャック・シリーズの 短編「六等星」を読み返したくなった。 ある夏の夜、 ブラック・ジャックとピノコのいた 花火大会の…

メフィストフェレス

文豪ゲーテの戯曲「ファウスト」に登場する 悪魔メフィストフェレスの存在は興味深い。 「ファウスト」は、 ゲーテが20代で初稿を執筆して以来、 第一部は1808年/著者59歳、 第二部は死後翌年の1833年に出版されたという、 生涯を通じてしたためられた大作…

本 ピエール・リヴィエールの犯罪 狂気と理性 | ミッシェル・フーコー編著

コレージュ・ド・フランス/国立特別高等教育機関における 哲学者ミッシェル・フーコー率いるゼミナールの共同研究書である、 「ピエール・リヴィエールの犯罪 狂気と理性」を読んだ。 オリジナルは1973年にガリマール出版社より、 邦訳は1975年に河出書房新…

本 ジャンヌ・ダルク復権裁判 | R・ペルヌー編著 高山一彦訳

中世史学者であり、ジャンヌ・ダルク研究における第一人者である、 今は亡きレジーヌ・ペルヌー編著による 「ジャンヌ・ダルク復権裁判」を読んだ。 原書は若かりし頃の女史が編纂し、 1953年にフランスで出版されたものだが、 時を経て、高山一彦氏により日…

本 ジャンヌ・ダルク処刑裁判 | 高山一彦編訳

フランス史におけるジャンヌ・ダルク研究者である、 高山一彦による編訳の「ジャンヌ・ダルク処刑裁判」を読んだ。 1971年に現代思潮社より初版刊行、 1984年に大幅な改訂版が白水社より、 2002年には「ジャンヌ・ダルク復権裁判」の訳書とともに、 新装版と…

本 岡本太郎 | 沖縄文化論

岡本太郎の「沖縄文化論 忘れられた日本」を読んだ。 多岐にわたり創作をくりひろげた芸術家が、 1960年に雑誌「中央公論」に連載した作品だ。 氏がはじめて沖縄を訪れたのは、 アメリカ統治下にあった1959年秋のおよそ半月で、 ひとつの恋といえるほど、沖…

本 木山捷平 | 白兎 苦いお茶 無門庵

人の世に、 小説家の数だけ、 種々様々な小説がある。 そう短くも長くもない人生のうちに、 すべてを読むことはできないだろうし、 またその必要もないだろう。 すると、 いつ、なにを、読むかということになる。 そういうとき、 呼んでいるような、呼ばれて…