佐賀町日記

林ひとみ

77回目の終戦日

今年の夏は

西瓜と枝豆をよく食べた。

西瓜はほとんど毎日、

枝豆は二日に一度くらい食べた。

食欲のない夜は、よく塩をきかせた

枝豆だけで済ませることも。

 

そんなとき漫画家・水木しげるさんの

短編「地獄と天国」を思い出す。

現在のパプア・ニューギニア

ニューブリテン島での戦争体験記で、

想像を超える非人道的な戦争の事実に驚いたり、

現地の土人たちとの交流に感動したり。

戦争末期、20歳前後で陸軍に招集された水木さんは、

近眼のためラッパ兵としてスタートするのだけれど、

どうして音をうまく鳴らすことができなかったらしく、

南方の激戦地ラバウルへ最下級の二等兵として配属される。

劣勢の最前線でマラリアに罹り、空爆による負傷から左腕を切断、

後方の野戦病院九死に一生を得たことで、

おめおめと死んでたまるかと発奮、

現地のトライ族と交流を重ね、意気投合、

パウロという名前をもらい友だちとなる件は楽しい。

再度のマラリアで生死を彷徨うなかで、

彼らにパパイアやバナナなどのフルーツを届けてもらい、

奇跡的に回復したというからすごい。

とにかくマイペースの人で軍隊生活に苦労したそうだけれど、

この不思議な人間力が、後年の漫画家を生かしたのだと思うと、

個性というのはなんてかけがえのないものだろう。

そのユニークさは天与のものと思えるほどで、

ひょっとすると妖怪の力もあったのかもしれない。

水木さんにしか描けない、

妖怪の世界と、戦争の実録。

 

今日8月15日は、

日本人にとっては77回目の終戦日。

77年間、平和だったといえるかどうかは別として、

戦争をしなかったことは、よかったと言いたい。

亡くなられた方、生き残られた方、いずれもの、

先人たちが盾となってくれていること。

両手をあわせたい。

 

生きていること。

そのいのち。

 

果物や野菜は、大地のしずく。

塩は、海のひかり。

 

言葉は、はじまり。

人間は、たまご。

 

 

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