佐賀町日記

林ひとみ

TEZUKA 2023 ブラック・ジャック

手塚治虫の名作「ブラック・ジャック」の新作が、

連載50周年の特別記念企画として、

週刊少年チャンピオンの11月23日発売号に発表された。

 

読み切り32頁の「機械の心臓 Heartbeat Mark Ⅱ」は、

天国にいる漫画の神さまのかわりに、

AI と人とのコラボレーションでつくられた、実験的な作品。

物語のプロットやシナリオやセリフ、

新キャラクターの画像生成などは、AI と人との共同作業で、

最終的な作画は人の手によるものだという。

 

あらすじは、近未来、

人工臓器が実用化されている最先端医療の現場で、

人工心臓におこった謎の血腫の原因を突き止め、

解決するという、BJシリーズらしいもの。

 

先天的な遺伝子欠陥のために、

体のほとんどが人工臓器になってしまったマリアは、

AI によって臓器間のネットワークが保たれている、

半ばサイボーグのようなヒロイン。

そしてその人工臓器を開発しているのが、

マリアの父という親子愛の物語にもなっている。

王道のストーリーにおなじみの、

本間先生やドクター・キリコもでてきて、

ブラック・ジャック」ワールドは満載。

特別篇らしい大放出感には、

賛否両論ありそうだけれど。

 

人工皮膚をもつピノコはいう。

「ろこまれが人間れ

 ろこから人間じゃなくなゆの?

 人間てなんらの?」

「ねえ先生

 やっぱり生きていられるのが

 一番よのさ」

 

ふと思う。

この無邪気なセリフを、手塚さんなら、

ピノコに云わせたかな、と。

なんとなく云わせなかったのではないかな、

そう云わずとも、自ずと、

それを読者に感じさせることができた人だったような。

 

人工知能に手塚さんの作品を学習させて、

手塚さんを再現できるのか、

また超えることができるのか。

 

とまれ、AI によって問いかけられているのは、

人には何ができて、何ができないのかということと、

人が人を愛するとはどういうことなのか、

だと思う。

 

進行形ゆえに未知数の、

ブラック・ジャックに再会できて、

とてもうれしかった。

 

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