佐賀町日記

林ひとみ

映画

杜人 ~ 環境再生医 矢野智徳の挑戦

キネカ大森のドキュメンタリー映画祭で 「杜人 ~ 環境再生医 矢野智徳の挑戦」を観た。 日本各地で展開されている「大地の再生」プロジェクトの、 感動的な記録映画。 「杜人/もりびと」という愛称がぴったりな 造園家の矢野智徳(やのとものり)さん/1956…

アニエス・ヴァルダの幸福

今日は海の日。 2022年の梅雨は早々に、 例年より半月ほど早い6月27日頃に明けた。 ところがまたしばらくの雨模様、 夜は涼しくて寝やすい日がつづいたけれど、 今日連休の最終日は、海日和。 ひさしぶりの太陽に元気をもらうような、 くったりするような。 …

映画2本 大みそか 2021

今日で2021年もおわる。 大みそかは、俳句の季語で、 大年、大つごもり、という言い方もあるし、 それぞれの郷土の方言とか、古語などにも、 まだまだ知らない表現がたくさんありそうだ。 わたしは「大年・大歳/おほどし」がなんとなくいい。 365日の最後の…

地球交響曲 第九番

7月5日、今年はじめて 上野でせみの鳴声をきいた。 梅雨らしい湿度の高い日が続き、 涼しいような、蒸し暑いような。 何年も土のなかに生きるセミにとって、 地上へ這い出すのは一種のカタルシスだと思う。 ところが一番乗りでまだ仲間が見当たらず、 あれ?…

くちなし 散骨 半藤さん

ベランダのくちなしの花が咲いた。 楕円形の蕾をみつけたと思うと、 6枚の花弁はたちまちひらいて、 2日ほどであっさりと散ってしまう。 こってりとした香りが漂っている。 5日に咲きはじめて、あっちむいてこっちむいて13花。 6/7の東京新聞と、6/8の日経お…

罪の天使たち

ロベール・ブレッソン監督の長編第一作品 「罪の天使たち/Les Anges du péché」/1943年をDVDで観た。 修道院を舞台とした、たましいの救済の物語は、 罪を犯して世間から逃れてきた娘たちと、 信仰のために世俗をすてた娘が出逢い、 院長や副院長などを巻…

エルンスト・ルビッチ | To Be or Not to Be

エルンスト・ルビッチ/Erunst Lubitsch の 映画「To Be or Not to Be/生きるべきか死ぬべきか」を観た。 第二次大戦中の1942年にアメリカで制作された本作は、 恋愛と戦争サスペンスとが織り込まれた シニカルなコメディタッチのモノクローム映画だ。 物語…

映画 東京裁判 | 小林正樹

映画監督・小林正樹が、5年の歳月をかけて 1983年に完成させた記録映画「東京裁判」を観た。 なぜ戦争が起こったのかという経緯や背景のみならず、 国際裁判をめぐる各国の思惑や各人の人間ドラマが、 277分の密度の高いフィルムにより浮き彫りになり、衝撃…

静かなる情熱 エミリ・ディキンスン

公開中の映画「静かなる情熱 エミリ・ディキンスン」を 神保町の岩波ホールで観た。 2016年に制作された イギリスのテレンス・デイヴィス監督・脚本による 原題「A QUIET PASSION」は、 かつての知られざる詩人の生涯を、 静かに情熱的に、きめ細やかに描き…

黒澤明 | 静かなる決闘 醜聞

映画監督・黒澤明/1910-1998の 比較的初期の作品「静かなる決闘」と「醜聞」を観た。 いずれも見応えのある、力強い作品だった。 「静かなる決闘」/1949年は、 終戦間際の野戦病院での手術中に 誤って患者のスピロヘータ/梅毒に感染した、 若い医師の苦悩…

映画 ココ、言葉を話すゴリラ | バーベット・シュローダー

「ココ、言葉を話すゴリラ/Koko le gorille qui parle」を 銀座メゾンエルメスのル・ステュディオで観た。 おもにフランスおよびアメリカで活躍する 映画界のプロデューサー・監督・俳優である バーベット・シュローダーが 1978年に監督したドキュメンタリ…

映画 ロベール・ブレッソン | ジャンヌ・ダルク裁判

ロベール・ブレッソンの「ジャンヌ・ダルク裁判」を観た。 監督にとっては中期にあたる、1961年に撮影された、 フランスの聖女についての、61分のモノクロの作品だ。 ジャンヌ・ダルクは、 フランス国内およびイギリスにまたがり、 およそ116年ものあいだ争…

映画 ルキノ・ヴィスコンティ | 若者のすべて

ルキノ・ヴィスコンティの「若者のすべて」を観た。 1960年制作の本作は、 長編全14作のうち、6本目の監督作品だ。 ジョバンニ・テストーリの短編「ギゾルファ橋」を原案に、 常連のスーゾ・チェッキ・ダミーコ等と共に脚色したという、 イタリア南部の農村…

映画 ロッセリーニ | インディア

ロベルト・ロッセリーニの「INDIA Matri Bhumi」を観た。 「インド 母なる大地」だ。 1958年制作の本作は、インドを題材とした、 新聞の三面記事から着想を得たといわれる、 4つのエピソードで構成されている。 プロローグは大都市ボンベイ/現ムンバイの お…

映画 イヴ・サンローラン

ピエール・トレトン監督によるドキュメンタリー、 「イヴ・サンローラン/Yves Saint Laurent - Pierre Berge , L'amour Fou」を観た。 2008年にサンローラン氏が逝去してから、 その実像にせまる映画が3本制作されている。 2010年の本作と、 2014年の「イヴ…

映画 エミール・クストリッツァ | UNDERGROUND

エミール・クストリッツァの「アンダグーラウンド」を観た。 1995年に制作された長編5作目にあたる本作は、 集大成のような、ベスト盤のような映画だと、 監督は語っている。 物語は、 ふたりの男の間に交わされた友情と裏切りや、 人々を騙し利用しつづけた…

戸田奈津子 | 午前十時の映画祭

「第三回 新・午前十時の映画祭」のチラシをみつけた。 「午前十時の映画祭」は、 名作・傑作を1年間にわたり週替わりで午前十時に上映する、 映画演劇文化協会主催の映画祭だ。 2010年より開催され、今回で通算6回を数えるそうだ。 上映館を拡大しつつ6年継…

映画 ルキノ・ヴィスコンティ | 白夜

ルキノ・ヴィスコンティの「白夜」を観た。 1957年に制作された、監督5本目の作品だ。 ロシアの文豪フョードル・ドストエフスキーが、 1848年・27歳のころに書いた、同名の中編小説を原作とした、 数夜のはかない恋物語。 孤独で夢想家のマリオ/マルチェロ…

映画 カール・Th・ドライヤー | Ordet

カール・Th・ドライヤーの「Ordet」を観た。 1979年日本公開時につけられた邦題は「奇跡」だが、 デンマーク語の原題「Ordet」は、 ギリシャ語「Logos」に相当する、 神の御言葉、というニュアンスであるようだ。 映画監督カール・Th・ドライヤーの、 全14本…

セバスチャン・サルガド | THE SALT OF THE EARTH

書き初めにならい、 映画初めに、昨夏公開された 「セバスチャン・サルガド 地球へのラブレター」を、 早稲田松竹で観た。 監督はヴィム・ヴェンダースと、サルガドのご子息、 ジュリアーノ・リベイロ・サルガドとの共同作品。 1944年ブラジル生まれのフォト…