佐賀町日記

林ひとみ

日の出山 神苑の森

雨つづきのお天気の合間をぬって、

東京都西多摩郡の日の出山へ登った。

 

山仲間のアキさんと、

武蔵五日市駅に8時頃待ち合わせて、

バスで登山道入り口へ向かうこと15分。

昨秋11月以来の再会だった。

よくストレッチして、山道へ入ると、

わけもなく、うれしくなる。

何かから、解放されるのかな。

くまと逢わないように、鈴を鳴らしたり、

手を鳴らしたり、大きな声で話したりしながら、登る。

よく整備されているハイキングコースなので、

道迷いの心配もなさそう。

ゆっくりのペースで30分ほどで、見所の顎掛岩に。

日本武尊/ヤマトタケルノミコトが顎をかけて、

関東平野を見渡したという伝説が残るそう。

でも、どの代の日本武尊だろう。

すこし先のクロモ岩あたりの分岐で、

麻生山のほうから登ってきたご夫婦が、

「さっき、15分くらい前にくまに逢いました!

 10mくらい離れたところにいるのに気づいて、

 くまのほうが先に逃げてくれたからよかったけど、

 はじめてで、びっくり!やっぱりいるんですね!」

と教えてくれた。わたしたちふたりもびっくり!

びっくりしながら木の階段を登ってゆくと、すぐ山頂/902mで、

関東平野を一望しながら、10時のおやつを食べた。

高校生のころから好きな、

リトルマーメイドのミルクフランスを、

拝島駅で乗り換えるときにみつけて、懐かしく。

「ぶぅぉーーん」という法螺貝の音が、

御嶽神社のほうから響いてくる。

丸くて力づよい、気もちのよい音に誘われるように、

なだらかな尾根道をすいすい歩いて30分、

御岳の長尾平で、すこし早めのお昼を食べる。

この後どうしようか、まだ歩いたことのない、

神苑の森を歩いてみようか、ということになり、

天狗の腰掛杉のわきの入口へ。

 

御嶽神社のたもとの、原生林ののこる森は、

人がすれ違うことがむつかしいくらい細い山道で、

あまり人も入らない様子。

神聖なきもちで、入らせていただきます。

すぐ近くから、また法螺貝の音。

強風で散らばったような木の枝を払いながら、

10分くらい歩くと、樹上から「ぶぅぉん!」という、

ものすごい風音と、朱と橙の中間色みたいな何かが、

目で追えないくらいの速さで飛行して消えて、びっくり。

大きかったので、ムササビかな。

わたしたちに驚いて逃げたのかな、ごめんね。

また10分くらいゆくと、こんどは大きなカモシカが、

5mくらい先の道のうえに、どっかと座っている。

わたしたちに気づいて、興味津々でこちらをみている。

すごくやさしい顔。それにきれいな目。

からだは熊のように大きくて、ぼわんとしたグレー色。

「こわがらないでね、なにもしないから。

 この先に行きたいのだけれど、いい?」

ときいても、立ち上がってみるだけで、動く気配はない。

しばらくにらめっこしてみても、

ものすごく気持ちよさそうに憩っている。

お気に入りの場所なのかもしれない。

神さまの使いかな。

今日はお戻りなさい、ということで、

一方通行の道を、素直に引きかえすことに。

 

ゆっくり歩いて45分の小径は、

神秘に満ちているみたい。

またあらためて、うかがいます。

 

久しぶりの山、楽しかった。

 

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