佐賀町日記

林ひとみ

罪の天使たち

ロベール・ブレッソン監督の長編第一作品

罪の天使たち/Les Anges du péché」/1943年をDVDで観た。

修道院を舞台とした、たましいの救済の物語は、

罪を犯して世間から逃れてきた娘たちと、

信仰のために世俗をすてた娘が出逢い、

院長や副院長などを巻き込んでドラマティックに展開してゆく。

 

2009年12月にアテネ・フランセでみて以来、

深く心に残る、忘れられない映画だった。

なんといってもジャン・ジロドゥのテキストが素晴らしく、

幸いにもノンブル社より日本語訳が刊行されているので、

今回はテキストと映画を照らし合わせて観ることができた。

こういうときDVDはとても便利だ。

何度も一時停止をしつつテキストと見比べてみると、

省略されたり、変更されている箇所がけっこうあった。

なるほどと思ったり、そういうことかと理解を深めたり。

物語のエッセンスを結晶したブレッソン監督の映像に、

寺尾次郎氏のミニマムな翻訳もすばらしいと感じた。

ジロドゥ氏の最晩年の作品でもある「罪の天使たち」。

 

この素晴らしい作品へ、詩を捧げます。

 

 

 

 

そこは

ベタニの天使の園

 

はじまりとおわりと永遠の

 

罪をおかしたものたちを

迎え入れる神のゆりかご

 

使命にかられたものの

力を試みる神の道場

 

信仰という

みえない壁によって

 

ひらかれているし

とじられてもいる

  

修道女たちの

のぞきあう

 

鏡の名は

世界

 

そこに映る

すべてはわたし

 

洗濯するのは

修道服と

ことば

 

掃除するのは

テーブルと

たましい

 

わたしはわたしを

けっして選べない

 

サルヴェ・レジー

 

あなたに感謝します

偽りを述べたことに

 

神はおおよそ

矛盾のそばがお好き

 

はるかに高く

飛べることのある

罪の天使たち

 

ベタニの天の園

 

おわりとはじまりと永遠の

 

信仰という

みえない壁は

 

無慈悲に

慈悲深く

 

そこは壁の

内かしら

外かしら

 

いいえここは

世界の中心

 

アヴェ・マリア