佐賀町日記

林ひとみ

さくら 2022

家のベランダの

啓翁桜の花が咲いた。

しばらく春らしいお天気が続いて、

今日の満月も影響しているのか、

例年よりすこし早い開花となった。

一昨年と昨年は、

ほんとうに花が少なく心配したが、

今年は蕾がたくさんついているので、

よかった、ほっとした。

心なしか、今年の花は

ピンク色が濃いようにみえる。

今日は一転、雨もようでまた寒い。

 

おととい3月16日の夜中、

23時半ころに、大きな地震があった。

一日を終え、布団に横になって、

さあ眠ろうとするときだった。

けっこう長く横に揺れて、

揺り籠みたいだなと思っていたら、

スタンド式の全身鏡が大きな音を立てて倒れた。

幸い割れなかったけれど、様子を見に起きた時に、

停電と断水になっていることに気づいた。

カーテンをひいてみると、街全体が真っ暗だ。

江東区に住んで10年で、はじめてのことだった。

海がすぐ近くなので、津波のことが頭によぎり、

タブレット地震速報を確認したあと、

疲れていたので、すぐに眠ってしまった。

それでも午前2時すぎには停電が解消したことを、

加湿器が動きはじめた音でおぼろげに知った。

翌朝、東京都水道局のツイッターを確認すると、

断水の原因は、集合住宅のポンプが

停電で動かなくなったためだとわかった。

 

ウクライナで、たくさんの人たちが

ライフラインを断たれ、水も電気もない中で、

不安と恐怖に向き合っていると思うと、たまらない。

国と国との戦いに、戦いの用意の全くない、

民間人の命がなぜ奪われなければならないのか、

世界全体でどうしてすぐに止めないのだろうか。

全面戦争になることを恐れるのはわかるけれど、

だとすればウクライナの人たちはなんだろう。

 

インターネットのニュースで、

首都キエフに残りつづける男性の記事を読んだ。

その男性が語ったのは、ロシアへの憎しみではなく、

ウクライナをとても愛していること、

自分が生まれ育った土地とともに運命を全うしたいこと、

だから水や食料が尽きて死んでもそれで構わないのだということだった。

そういう人がいることに、ひどく心を動かされる。

なんて幸福そのものの強い人だろう。

不幸の入り込む余地は全くない。

その人の心は、武力でさえ破壊することはできない。

わたしは俳句に詠まずにはいられない。

どうか今すぐ破壊が終わるように。

 

最期まで国土離れぬまま菫   ひとみ

 

 

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