佐賀町日記

林ひとみ

ラ・カリファ

映画音楽で有名なイタリアの作曲家、

エンニオ・モリコーネの特選上映が、

新宿の武蔵野館で始まり、

ロミー・シュナイダー主演の、

日本初公開「ラ・カリファ」を観た。

 

1970年公開のイタリア映画で、

監督と脚本はアルベルト・べヴィラクア。

聞いたことのない名前だけれど、

脚本家で、本作は監督デビュー作という。

映画の背景には、

第2次世界大戦後の復興期を経て、

再び翳りのみえはじめたイタリアの、

不安定な社会情勢がある。

物語は、激しいストライキ闘争で、

夫を殺された労働者の女性と、

労働者を省みない冷酷な経営者との、

恋ともいえない恋によって、

対立が和解へ向かうかと思いきや、

悲劇に終るというメロドラマ。

バイオレンスとロマンスという、

ありがちな物語に深入りはできないけれど、

俳優たちの存在感がすばらしい。

労働者の苦労と、経営者の苦悩が、

不思議なかたちで結びついてしまって、

違和感はあるものの、

モリコーネ特選上映にふさわしい、

名曲がうまれたフィルムといえそう。

 

波乱万丈、悲劇の女優、

ロミー・シュナイダーには、

いつみても尽きない魅力がある。

野生的と思えば、高貴な感じもするし、

女っぽいような、男まさりのような、

無知のような、全知のような。

彼女のでている映画は、

どんな映画でもみたいと思わせてくれる人。

なかでもヴィスコンティ「ルートヴィヒ」の

エリーザベト役が、わたしは大すきだ。

 

混雑が予想される土日を外して、

久しぶりに歩いた新宿の東口。

建物はそのままに、

テナントががらりと変わって、

時の移り変わりをしみじみと。

 

武蔵野館もいつの間にか、

ぴかぴかのシネコンになっていた。

古い映画館にあった独特の香りがなつかしい。

時代って、ほんとに変わるんだな。

 

映画から、たくさんのことを教えてもらった。

学校では教えてもらえない、本当のこととか。

胸がいっぱい。