佐賀町日記

林ひとみ

直島と月島で

瀬戸内は香川県の直島で、

2006年の秋と、2007年の春に、

島全体を展覧会会場として開催された

企画展「直島スタンダード2」。

その時に一緒にスタッフとして参加した友人と、

東京の月島で束の間の再会をした。

 

毎年、年賀状のやりとりをしていたから、

ご結婚されて、お子様がふたり、

ということは知っていて、

また逢いたいなと思ってはいたけれど、

ほんとうに逢えて、とてもうれしい。

 

お住まいの神戸から東京へ、

連休の家族旅行の合間に、

月島のもんじゃ焼きをご一緒することに。

ほんとうに久しぶりなので

お互いにわかるかなと思ったけれど、

一目ですぐにわかって、なんてうれしい。

あの当時、若者らしくふっくらしていた私たちも、

時を経て、ずいぶんすっきりしたみたい。

数えてみたら17年ぶりで、改めてびっくり。

変わったことも色々あるけれど、

何も変わっていないような気もして不思議。

 

月島のもんじゃストリートは、

連休の夜ということもあり、

驚くほどの混雑ぶりだった。

いつのまにか観光地化されていて、

どこのお店も予約でいっぱいか、

待ち時間が2~3時間という盛況ぶり。

すぐに入れそうな洋食店をみつけて、

カオリさんとアユムくんはオムライスとオムグラタン、

ワタシはカキフライを食べながら、

あれこれの話がとまらない。

 

島での寮はふたつ、ヘキと中林にあって、

わたしはヘキで、カオリさんは中林だったね、とか。

朝4時くらいの真暗な時間に、

製麺所までみんなで歩いていって、

できたてのうどんに生卵をかけて食べたね、

たまごせんべいの工房に遊びに行ったね、

鉄塔を目ざして冒険したね、とか。

ベネッセの福武会長の奥様が、

ミスタードーナツを差入れしてくれたね、などなど。

アート展のことよりも、

そんな体験のほうが思い出されるから面白い。

 

安藤さんの地中美術館は言うに及ばすだけれど、

わたしが一番印象に残っているのは、

ジェームズ・タレルさんの南寺。

真暗闇に目がなれて、

だんだんものが見えてくるときの視覚の妙。

寝るときなどにも体験しているはずのことが、

意識化されることで、ひらかれる世界があること。

見ていること、知っていることのなかに、

気づいていないことが、たくさんあって。

 

しばらくしてから、

カオリさんの畑で採れたお野菜が、

箱いっぱいに届いた。

いのちがキラキラと輝いているのがわかる。

すぐにソーラークッカーで、

フクムラサキのお芋を焼き芋にした。

なんて美味しいのだろう。

 

直島と月島。

新しいことや、未知のこと、

そんな宝ものは、

島からやってくるのかな。