佐賀町日記

林ひとみ

庭園の休日 エトランゼ

4月に入ってすぐ、

7歳の甥っ子のピアノの発表会を聴きに行った。

昨年にひきつづき2度目のステージで、

1年前には抜けていた前歯も、

すっかり永久歯になり、たくましい。

春休み中に、

ひとりでおじいちゃんの家にお泊りして、

電子ピアノを持ちこんで練習したのだという。

はじめての学校に学童に、

毎週のピアノ教室も、

ほんとうによくがんばりました。

音楽がはじまる寸前に、3歳の妹が、

「ねぇ 〇〇くん ちゃんと できるかな」

とお兄ちゃんを心配していたのも、印象的だった。

 

その日、開花の早かった桜は見頃で、

目黒川はたくさんの人で賑わっていた。

広場のさくら祭りには、模擬店もたくさん。

目につきやすいのか、外国の方も多い。

パンデミックも終息へ向かうなか、

円安の日本は魅力的な観光地なのかもしれない。

今年度末に閣議決定された

観光立国推進基本法」のキーワードは3つ、

「持続可能な観光」「消費額拡大」「地方誘客促進」で、

3年計画の国家戦略らしい。

観光立国推進基本法 | 観光庁

観光庁国土交通省の外局で、設立は2008年だから、

ここ15年程の動向になる。

お昼を食べるにも、

どこも満員と人手不足で、ひと苦労。

 

気をとりなおして、その足で、

目黒駅の反対側の、自然教育園へ行く。

門をくぐると、きんぽうげ科の白い花、

いちりんそう、にりんそう、が満開だ。

砂利道をゆっくり歩く。

ここでは、人よりも鳥たちのほうが賑やかだ。

長老のような「物語の松」にご挨拶して、

大すきなひょうたん池の前で、

「ホログラム」とか「ポータル」とかいう

言葉と遊んでいると、

「何かいる?」と話しかけてくださる方があった。

きけば大鷹の写真を撮るために通っている方で、

50cmくらいの大きなカメラがベンチに置いてある。

「あそこに面白い虫がいるよ」といって、

奇妙な「ななふしもどき」を教えてもらったが、

枝と一体化していて、何が何だか。

あとで調べてみると、

メスひとりで卵をうめる単為生殖の昆虫らしい。

処女懐胎聖母マリアみたい。

ゆっくり園内をまわって小1時間、

再びひょうたん池へ寄ってみると、

大鷹ハンターに少年も加わって、

顔見知りなのか情報交換をしていた。

少年は受験を終えて、

この春めでたく中学生になるらしく、

2月の大鷹出現情報に、この日は受験で・・・と、

残念がっていたのが、面白かった。

植物園にも、ヨーロッパ系、アフリカ系、

アジア系など、外国の方はけっこういた。

 

翌週、俳句の吟行会で訪れた近所の清澄庭園は、

うららかな休日の日本庭園ということもあり、

エトランゼが半分近く、驚くほど賑わっていた。

彼らには「Oh Beautiful!」らしく、

一方「整いすぎてつまらなし」と詠む俳人もいて、

なにがなんだか。

泉水に遊ぶ亀には、

和亀と、外来種ミシシッピアカミミガメとがいて、

テリトリーも性質も、はっきり違うのがよくわかる。

奥の広場に満開の里桜は、まさにBlooming。

ボリュームのある八重の花は、たっぷり枝垂れてもいて、

龍のようにくねくねしているのも珍しい。

 

他日、パンデミック以来、4年ぶりに帰国した、

イギリス在住のいとこと、そのハーフの子どもたち、

それから他のいとこやその子どもたちと、みなで再会した。

いとこ・はとこ会とでもいえそうな集まりで、

中学生になるヨークのお姉ちゃんは日本が大すきらしく、

「どんなところがすき?」ときくと、

「ええと、人とか食べものとか・・・」と

ゆっくりの日本語で教えてくれた。

 

異国の方の目を通して、

日本をみるのも楽しい。

意識化されて、はじまること。

新年度のはじまりにそんなことを想った。

 

sagacho-nikki.hatenablog.com