佐賀町日記

林ひとみ

2月 2023年

節分と立春を過ぎて、

春の陽ざしを感じられるようになってきた。

確定申告を早々にすませて、ほっとひと息。

 

ちょうど昨年の今ごろ、

北京オリンピックの最中の2月24日に、

ウクライナへのロシアの侵攻という形で、

西側と東側の戦争が始まった。

大多数の人は知る由もないけれど、

関係者には想定されていた戦争だったようだ。

本気で回避するつもりならできたはずのことで、

あるいは西側の挑発もあったのかもしれない。

先の日本の開戦経緯のように。

いつの時代も、

市民の与り知らぬところで、国際社会は動いている。

 

経済にしても、中央の緩和政策の弊害が、

円安という形ではっきりと現れてきたので、

銀行の総裁人事もふくめて転換期にさしかかっている。

ここでも世界的な株価や為替の作為のなかで、

右往左往している個人がみえる。

 

そして1年が経った。

第二次世界大戦のうちの太平洋戦争、

つまり大東亜戦争は、3年9か月に及んだ。

当時の話を、いま祖父母に聴きたかった。

書くことの意義のひとつはここにある。

 

文士・小林秀雄は晩年の精華「本居宣長」に

時の戦国時代の景をかく。

 

 応仁の乱以来、百年以上にわたって、

 日本中の何処かで戦争が起っていない時はなかった、

 とさえ言っていい。

 まさに戦国時代であったが、兵乱は、

 決して文明を崩壊させはしなかったし、

 文明の流れを塞き止めもしなかったという、

 この時代の、言わば内容の方が、余程大事なのだ。

 群雄が、各地に割拠して、相争う乱世は、彼等が、

 どうあっても勝たねばならぬという、

 はっきりした必要に迫られて実践した、

 めいめいの秩序を内容としていたのである。/上巻p.82

 

歴史の大きな流れにみれば、

今の戦争もそういえるのかもしれない。

文明を崩壊させることはないし、

その流れを塞き止めることもないばかりか、

あるいは加速させるかもしれない。

そう頭で理解したところで、心はわりきれない。

人のいのち以上に価値あるものがあるだろうか。

おそらく頭と心の、働きの目的が違うのだ。

相半ばするこのちぐはぐを、

相半ばするままにしておくこと。

安易に一方に回収しないこと。

 

そのために本「本居宣長」の先へ進もう。

この内容を自分のものにするために。

 

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