佐賀町日記

林ひとみ

ふしぎな春

今年の春は

家のベランダの桜が咲かない。

どうしたことか蕾がひとつもつかなかった。

ふつうなら花のあとに芽をだす若葉も、

出ずに出られず、ほとんど冬木のままの出で立ちで、

例年の3倍ちかく花咲いた昨年が夢のよう。

唯一、根元から20㎝ほど伸びている若い枝に

新芽がつきかけていることが、

希をほのかにつないでくれている。

なにがあったのですか、代変わりか何かですか、

と問いかけてみるのだけれど。

どうか元気に生きつづけてくれますように。

 

この春、流行中のCOVID-19/新型コロナウィルスは、

2月まではアジアの問題だったけれど、

またたく間に世界中に広がってしまった。

とくにヨーロッパの緊迫した状況に驚くばかり。

当初、寄港したクルーズ船の集団感染などで

話題の中心だった日本は、いつの間にか、

取り残されたような、ほっとしたような。

発表されている情報が正しければ、世界にくらべ、

国内の感染者数は日に日に増してはいるものの、

よく持ちこたえているほうだと思っていた。

ところが、24日にオリンピックの延期が決まってから、

にわかに、特に東京で感染者数が増えはじめ、

その勢いが増しつつあって、どきどきする。

あちこちで目にする東京オリンピックのエムブレムが、

コロナウィルスの形に見えてきて、なんだか不気味。

 

外出が法で禁じられている他国を思えば、

日本はおっとりしているけれど、

自分のためにも他人のためにも、

外出を控えるようになっておよそひと月。

地震や台風のときとは違って

水道もガスも電気も、今のところ心配ないので、

それだけでもありがたい。

あたたかい食事がとれてよかった。

それに冬の寒い時期だったら、

もっと辛く感じられたかもしれない。

 

地震津波や台風に、原発事故まで、

遡れば、原子爆弾や大空襲を経験してきた国だから、

そう易々と動じない底力が培われていると信じたい。

 

我家の桜も、

今年は花咲くことをお休みしたのだ。

そういう不思議な年があってもよいのだ。

 

まだしばらくウィルスの混乱は続きそうだけれど、

たとえばサーフィンの人たちのように、

上手に荒波を乗り越えてゆけますように。

  

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