佐賀町日記

林ひとみ

自然教育園 神無月

11月もおわりに近づき

ずいぶんと寒くなってきた。

ベランダの啓翁桜も

紅葉をはじめている。

枝先の赤色から

枝元の緑色へのグラデーションがきれい。

ゆっくりと時間をかけて変身している。

 

ふと思いたち、

目黒の自然教育園に行く。

門をくぐると、すぐに自然の匂い。

香ばしい地球の匂い。

目にみえない生き物たちの気配につつまれる。

鳥はたえず歌っている。

からだの余計な力がぬけて、

本当の力につながる。

気持ちもやわらかくなる。

砂利道をひと足ひと足進める。

時計のリズムから、生命のリズムへ。

しばらくゆくと由緒ある「物語の松」と再会する。

わたしに刻まれた時間と、

大木に刻まれた時との異なりに思いを馳せる。

何百年という長い年月を

生き続けるということ。

驚くほど分厚い木肌に触れる。

ひび割れているのに、瑞々しい。

耳をおしあててみる。

音以前の振動に、

いのちのあたたかさに、耳をすます。

生きていることが愛おしい。

知り尽くせない奇跡の連続によって、

その核心に近づいてゆく。

ひょうたん池の水面に映る鏡の世界。

それはほとんどホログラム。

似て非なる世界へのポータルのよう。

わたしが今いる世界はなんだろう。

ここはいったいどこだろう。

確かさと不確かさが、

陽のひかりのように煌めきながら揺れている。

子どもたちの声が近づいてくる。

みみずがいた、トンボがいた、

枯葉色のカマキリがいたという。

目にみえるというギフトもまた。

ギフテッド。

 

11月は神無月。

あちこちの

いろいろな

神様たちは

いづもの國へ向かいます。

 

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