佐賀町日記

林ひとみ

なみ

はるかにつづく

おおきなひろい

 

海とじいっと

むきあっていると

 

ざわついた心の波が

すうとひいてゆく

 

ざざざざん

ざぶざぶん

 

わたしはなんてちいさく

はかない存在でしょう

 

あなたをまえに

それはとてもうれしいこと

 

と呟くと

 

いかにも

わたしのかわいい娘よ

 

とさざ波はいう

 

そういうわたしにも

おおきな望みがあるのです

世界がよりよくなることです

 

と伝えると

 

ほう

それでどうしますか

 

小波はつづく

 

海にたゆたう

無数の波の

ひとつのように

 

ささやかながら

 

わたしはわたしの心が

よろこぶ行いを

選びつづけます

 

それだけです

 

と告げると

 

まこと

ひとりにひとつの道がある

 

さて

よろこびの道の行く先は

よろこびの地でしかないだろう

 

よき航海を

 

と波は跳ね

泡となった

 

やわらかな砂に

ふたつの素足と泡は

すいこまれ

  

しずかに洗われた

心の浜辺には

 

ざざざざあと

 

新しい力が

おしよせた

 

わたしのからだに

 

ちいさなひとつの

海がうれまれた

 

ざざざざん

ざぶざぶん

 

碧い海は

 

今日もまた

 

生と死を

育みながら

 

地球をぐるりと

身体をくるり

 

波をつれて

旅をしている

 

 

 

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