佐賀町日記

林ひとみ

バラの花 またひとつ

ベランダの鉢植えの

バラの花がまたひとつ咲いた。

 

今年4月に挿し木した幼いバラの樹に

花が咲いてびっくりしたのは秋分の9月23日頃だった。

そのひとつめの花は1週間ほど元気に咲いていたが、

9月30日から翌10日1日にかけての夜中に通過した

ものすごく大きな台風に、ひとっとびにさらわれてしまった。

台風24号はまれにみる大きな台風で、翌朝は街中が

ひきちぎられた樹の枝や葉っぱなどで、雑然としていて、

おちおち車も通行できないような吹き溜まりもあった。

バラの花びらはどこへ運ばれたのだろう、

あっけないような、いっそきもちがいいような。

 

そのことが悔しかったのか、その後、

枝をぐんぐん上に伸ばして、葉をもっと大きく広げて、

秋の変わりやすいお天気にもめげず、樹丈も50㎝ほどに成長し、

ふたたび新しいつぼみをつけたのは、10月28日頃だった。

えっ、また花が咲くの?と驚きつつ、

バラという植物の気丈さを感じたのだった。

すこしずつ、ふくふくふくとつぼみがふくらみ、

5枚のガクが星のようにひろがって、ようやくここ数日で、

深紅色の花輪がふんわりとほころびはじめた。

秋の深まりのためか、ずいぶん時間がかかったけれど、

ひとつめの花よりもずっと大きく、また形も進化して、

花屋さんに並んでいてもおかしくないような

立派な八重の花になった。ちょうど昨年の今頃、

切り花だったときとおなじような美しさで咲いている。

 

とっくに立冬を越したのに、もう11月下旬も近いのに、

そういうことはあまり関係ないのか、

咲きたいときに咲きたいように咲いていて、

なんだかいい。

 

自由って、自分自身に忠実であること。

わたしの中の自由の種の、その声に、

静かに耳をすませたい、秋のおわり。

 

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