佐賀町日記

林ひとみ

詩 かぼちゃ

トリック・オア・トリート!

いたずら・か・お菓子!

 

かぼちゃの

ランタンに照らされて

 

呪文をとなえる

ハロウィンの魔法の夜

 

ニャーニャオと

かわいらしい2匹の猫が

電車にのってきた

 

三角の耳に

ふさふさした体毛と

しっぽのついた

 

グレーの猫は

 

こどもでも

おとなでもない

メスとオス

 

どこか

新天地に降り立つ

旅人のように

 

あたらしくて

あどけない

 

いっぽう

かぼちゃの馬車の通勤電車に

ゆらゆら揺られて家路をたどる

 

おとなたちはみな

おなじみどおりで 

 

だれひとり 

2匹のグレーの猫に

気づかないようだった

 

まるでみえないのか

みえないふりをしているのか

 

魔法にかかってしまったのか

魔法にかからないのか

 

ふんわり楽し気なグレーの猫たちと

いささかグレーにしずみがちな

通勤馬車とのコントラストに

 

くるくるくるくる

 

おとぎの国に迷いこんだ

アリスの気分

 

かっちりと

スーツに身を包む

おとなたちの

 

さまざまな

装いを身に纏う

わたしたちの

 

だれが仮装で

だれが仮装でないと

いえるだろう

 

すべてが曖昧に

奇妙にみえるのは

 

トリック・オア・トリート!

 

ゆらめく

かぼちゃのランタンの

 

いたずらな

夜のせいかな