佐賀町日記

林ひとみ

かぜをひく

STAY HOME の号令のもと、

外出がままならない日々が続いている。

 

家の近くの隅田川沿いのテラスは、

歩く人、走る人、犬の散歩、などの人々で

びっくりするほど賑わっている。

暗い顔をしている人はあまりいない。

ウィルスのことは一時忘れて、

みんな平和を満喫しているようにみえる。

 

わたしも本を片手に河岸へ向かう。

じっくり読もうと思っていたページを開いて

読みはじめるのだけれど、

川面や太陽や葉桜や子供たちなどの

目の前の世界が楽しくて、なかなか先へ進まない。

今年はベランダにやってこなかった

青色のイソヒヨドリにも会えて、うれしい。

君はここにいたのか。

 

始めて一年になる俳句をつくるのも

楽しい時間のひとつ。

 

春籠り黒澤明全三十   ひとみ

 

そんな或る夜、4月8日のこと、

黒澤明監督の「影武者」/1980年をみていたら、

軽い寒気を覚えた。

何度みても素晴らしい映画だけれど、

3時間近い長編なので、前半で休止、

入浴後すぐに就寝した。

 

翌朝は元気に起床したものの、

午後になって喉の右側の上咽頭に痛みと、

全身に軽いだるさを感じた。

 

それから2~3日は、喉の痛みが強くなり、

睡眠は十分なはずなのに眠たくて、

右の顎下のリンパ節が炎症しているのか、

押すと痛みがあった。

鼻水や咳や痰はほとんどなく、

食事は美味しいのだけれど、

食べる、話す、唾を飲みこむ、と喉が痛い。

そうこうするうちにその痛みが、

咽頭から上喉頭へと降りてきたので、

どきりとする。

 

ふだんならそう心配することもない、

ありふれた上気道の風邪症状なのだけれど、

パンデミックの渦中、ひやりとする。

 

もしかすると、

COVID-19に感染したかもしれないし、

COVID-19ではないかもしれない。

身近に体調不良の人はいないし、

ここ一か月近く、外出も控えている。

最低限の買物とちょっとした散歩くらいだ。

 

試しにトローチをなめてみると、

すぐに喉の痛みが和らぎほっとした。

と思ったのも束の間、

右側の首と、同じく右の前腕に、発疹がではじめた。

けし粒大のものが20くらい、と、

蚊にさされたようなものが3つくらい、

異なる種類のものが、異なるタイミングででた。

風邪と関係があるのか、トローチと関係があるのか、

のどの痛みも発疹も、

症状が右側に集中していて不思議。

 

COVID-19は、

8割の人はおよそ1週間の風邪症状が続いて治癒、

2割の人はその1週間後から重症化するときく。

 

喉の痛みの症状がでてから、

今日は7日目、ちょうど1週間だ。

そして昨夜はちょっとしたドラマがあった。

寝入りに、体温を全く感じないような、

熱くも寒くもない、無感覚状態になり、

変だなと思いつつ眠ってしまったのだが、

夜中1時頃、急に喉の痛みが強くなり、

全身に汗をびっしょりかいた。

途中で着替えて、祈る気持ちで朝を迎えると、

だいぶ落ち着いていて、ほっとした。

体力を消耗したのか、朝からだるい。

幸い、発熱はいちどもしていないと思う。

 

いずれにしても、

なるべく病院には行きたくないし、

どうもしようがないので、STAY HOME。

 

人にうつさないように、

おとなしく養生しよう。