佐賀町日記

林ひとみ

2月尽

今日は2020年/令和2年2月22日。

なんだかルーレットにでも当たって

おめでたいようなうれしいような日だ。

 

すっかり春めいてきたこの頃。

気温も湿度もおだやかにあがって、

コートやマフラーの内で汗ばむ日もある。

梅の花もあちこちで咲いている。

ときおりかすめるほのかな香がうれしい。

福岡大宰府天満宮では平安の頃と同じように

梅の宴がひらかれただろうか。

 

旧暦のお正月、

中国でいう春節は、今年は1月25日で、

そのころからコロナウィルスが話題になりはじめた。

中国中部の湖北省武漢市で

去年の12月頃に発生した新型の肺炎ウィルスということだが、

折も折、春節恒例の中国人大移動に伴い

感染が拡大したことも難儀だった。

ウィルスのコロナという名前、

太陽コロナでなじみがあるけれど、

ラテン語ギリシャ語で王冠・花冠・光冠を表すというから、

なんだか憎めない。

 

日本でも、

たとえば東京でも感染した人が数十人いて、

他人事ではない。

インバウンドで賑わっていた銀座の中央通りは

人通りが著しく減ったし、百貨店はガラガラだし、

電車に乗れば85%くらいの人がマスクをしている。

気にしはじめるときりがないけれど、たとえば私は、

咳を繰り返す人のいる電車の車両を移動したり、

エレベーターのボタンを鍵などで押してみたり、

銀行のATMやメトロのタッチパネルを指の第二関節で操作したり、

大声で電話で話す中国語が耳に入ればさりげなく遠ざかったり。

ちょっと悪いなと思うので、

心の中でごめんなさいを言いながら。

 

今のところ友人知人に感染したという話は聞かないが、

卒業式や入学式がどうなるかわからないとか、

演奏会が中止になったとか、

冠婚葬祭があるけれどどうしようなどという話がちらほら。

私も連休にひかえている声楽の発表会について、

来場者の名前を管理し、

手のアルコール消毒とマスク着用の徹底、

風邪症状のある人の出演と来場のお断りなど、

対策をしっかりとって開催するという通達がきたばかり。

家族は花粉症がはじまったので、

風邪の症状と疑われないといいのだけれど。

 

東京はオリンピックが夏にひかえているから、

なおさらかもしれない。

オリンピックの開催が決まった7年前の当時、

すでに「東京オリンピックは開催されない」という

予言めいた説をきいたことがあった。

誰か言ったか知らないけれど、

そう予測した人は「それみたことか」と思うのだろうか。

 

だいぶ暖かくなってきたし、

乾燥もやわらいできたので、

どうかこのまま流行が収束してくれますように。

 

家や建物に籠って表に人影のない町や、

マスクで顔を覆う人の群をみて、

宮崎駿の漫画「風の谷のナウシカ」全7巻を思い出した。

荒廃した地球に生きる少女ナウシカの言葉、

「 こんなに世界は美しいのに

  こんなに世界は輝いているのに 」

という言葉を心によく刻んでおきたい。