今年も、かぼすの季節がやってきた。
10月初旬に大分から届いたかぼすは、
気まぐれな9月の天候のせいからだろうか、
例年と比べるといささか不揃いで、
あちこちに傷がついていたが、
ふたつに割ってみると、
いつもと変わらぬジューシーで爽やかな酸味が
部屋いっぱいにひろがり、うれしくなる。
さっそく輪切りにしてはちみつ漬けをつくる。
きのこと秋刀魚のパスタに回しかけて食べる。
あぁおいしい、初秋の味覚だ。
今年はかぼすの種で、
ローションをつくることにする。
かぼすやゆずやレモンなどの柑橘類の種には
ゲル化作用のあるペクチンが含まれているので、
水やアルコールに浸すと
とろりとした天然の保湿液になるのだ。
作り方はとても簡単で、
5粒ほどの種を小瓶やココット皿にいれ、
種がしっかり浸るくらいの水を注ぎ、
冷蔵庫で一晩おけば、2~3日分のローションの出来上がりだ。
洗顔後の肌にカバーすると、
しっとりさっぱりとして、ほんとうに心地よい。
なんて素朴で上質なローションだろう。
たとえば日本酒や焼酎でつくると
保存性が高まるので、まとめて作り置きできるという。
また、種は乾燥させたり冷凍したり、
食べるたびにちょこちょこ集めてストックできる
手軽さも気に入っている。
乾燥しはじめた秋の空気に、
自然からの何よりのおくりものだ。
秋の深まりとともに世間は、
10月22日の国政選挙に向けて、にわかに色めきたっている。
あちこちで選挙カーや街頭演説が、
盛んにいろいろなことをアピールしている。
その頑張りには頭が下がるけれども、
この期に本当にアピールする必要があるのは国民のほうで、
どうしてか民意が反映されているようには思えぬ政治に、
がっかりしてもいられない。
「誰に、どの政党に投票しますか?」と
受話器のむこうで自動音声システムが再生される。
RDD方式/無作為な電話番号作成方式というけれど、
選挙のたびに必ずかかってくる。
「政治はみんなが一緒に生きる道ですから、
いちばん大事な問題でー」
とは、文士・小林秀雄の後年の見解だけれど、
数学者・岡潔との対談集「人間の建設」/新潮社を再読しつつ、
誰に、どの政党に投票するかを、考えたい。
秋の夜長、
かぼすの皮を浮べた湯船につかりながら、
ゆっくりと。