佐賀町日記

林ひとみ

はちがつはつねつ

8月の中旬に発熱した。

友人からもらってしまったようだ。

たぶん季節外れのインフルエンザで、

みるみるうちに高熱に。

 

夕方に歌の練習をしていたら、

鼻の奥にぱさぱさするような違和感を感じて、

途中で練習をきりあげた。

翌日は午前中からお腹がむかむかして、

お昼ご飯をやっと食べたと思ったら、

強い寒気がして発熱。

湯たんぽを抱えて横になり、

体の節々がきしむような鈍痛に包まれた。

夜には39.4℃まで熱が上がり、

こわくて頓服の解熱剤を飲んで眠った。

うつらうつら、寒気と高熱とで、

温めていいのか冷やしていいのか。

氷まくらのなかで、

氷と氷の触れ合う音だけが耳に心地よかった。

夜がとても長く感じられた。

 

3日間は意識が朦朧としていて、

食欲はほとんどなく、

4日目くらいに微熱まで下がり、

ようやく頭もはっきりしてきた。

山の日に約束していた登山は延期。

世間はお盆休みに入って、

予定もなかったので、心おきなく養生できた。

 

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おかゆやお茶漬け、フルーツやゼリーをよく食べた。

のどの痛みはほとんどないものの、

食べものの味がしなくてかなしい。

1週間経ってはじめて、

マットレスと布団をあげて日常に戻れたものの、

ゆっくりにしか動けず、何でも時間がかかった。

いつもしていることが、いつもどおりにできなくて、

実は脳をたくさん使って動いていたことに気づいたり。

それに、えっへん虫が下気道に棲みついて、

深い咳が2週間ちかくも残った。

ウイルスと共存する方便を探しているのかも。

まるでAIみたいに、

わたしの体が自動で対処してくれる。

わたしって一体だれ、不思議。

 

空白の空白八月発熱  ひとみ