佐賀町日記

林ひとみ

携帯電話を替える

9月は太陽の傾きをよく感じる月だ。

夏に空高くを描いた太陽の通り道は、

いつの頃からか徐々に高度を下げて、

気づけば斜めに、窓から暮らしの中へと差しこんでくる。

天頂から燦燦と降り注ぐ夏の光線とはまた別の、

透明度の高いまぶしさが印象的な季節だ。

 

対角の春にも太陽は同じような道を通るけれど、

秋のようなまぶしさを感じないのは、

夏から秋へ、と、冬から春へ、の違いだろうか。

 

台風がいくつかやってきて、

秋分を過ぎ、空気の乾燥が気になりはじめた。

朝晩はずいぶん涼しくなり、眠りもぐっと深くなった。

 

そうして気持ちに余裕ができたのか、

夏前から書面や電話で催促されていた

携帯電話の機種変更を、ようやく済ませた。

なにか周波数の変更とかで、

2022年3月をもって機種が使用できなくなるとのことだった。

ずいぶん先のことと悠長に構えていたのだが、

あんまり盛んに案内がくるし、先代は8年近く使用したので

電池の充電頻度が高くなってきていた。

思い返せば前回2012年に機種変更したときも、

周波数が3Gに切り替わるためだったし、

そして今回は4Gへの切り替えなので、

とかく周波数に翻弄されているようで、なんだか可笑しい。

 

わたしのように電子機器に頓着がなく

使えるうちは使っていようという人はたくさんいるだろうから、

携帯電話会社も余裕をもって対処しているのかもしれない。

 

二つ折りの携帯電話が

ガラケーと呼ばれるようになったのはいつからだろう。

おおよそポジティブに使われることのない俗称だけれど、

ガラパゴスなんてとっても素敵だと思う。

スマートフォンが便利なのは尤もだから、

タブレットWi-Fiルーターも携帯しているので、

今までのように電話は電話機能のみで、

同じように二つ折りのものを選んだ。

するとずいぶんと多機能で高価なものしか選択肢がなく、

使わないのにもったいない気もするが、仕方ない。

 

そうして身近な機器がバージョンパップして

心なしか気分もリフレッシュした。

 

くるくると、

めまぐるしく変化するようにみえる世の中、

無数に飛び交う電波の海の中で、

クジラみたいにどっしりと

イルカみたいに軽々と泳いでいけたらいい。

 

太陽は太古も今日も

毎日毎年同じように

東から昇って西へ沈む。

 

それを奇跡と呼ぶとして、

奇跡というのはそのように

淡々としているのかもしれない、と思うのだった。

 

 

 

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