先日、港区の高輪区民センター区民ホールで一般公開された
第2回スペイン音楽国際コンクール本選会・声楽部門を観覧した。
CD音源審査による予選を経た7名の歌手
/ソプラノ4名、メッゾ2名、テノール1名による競演は、
ほどよい緊張感と情熱につつまれた、見応えのある90分だった。
プログラムは各自、課題曲として
作曲家オブラドルス「スペイン古典歌曲集」より1曲以上と、
自由曲としてオブラドルス以外のスペイン作曲家の作品を、
併せて10~12分以内という構成だった。
スペイン歌曲という知られざるジャンルのためか、
250席の会場は、審査員6名と、出演者の近親者と思しき数名と、
声楽専攻の学生らしき幾名とで、こじんまりとした雰囲気だった。
はじめて聴く楽曲ばかりだったけれど、
7名それぞれのパフォーマンスから、声という楽器の
ユニークでカラフルな多様性を楽しむことができた。
純朴な、力強い、麗しい、ふくよかな、恰幅のよい、
すっきりとした、艶のある、さまざまな声。
たとえば、何名かの歌手は
課題曲で同じ曲を歌ったのだけれど、
おどろくほど歌い口やニュアンスが様々なので、
ほとんど別の曲を聴いているかのようだった。
訓練を重ねた一定の水準以上の歌唱に対して
甲乙をつけるのは簡単ではないけれど、なかでも
とびぬけて素敵な歌声を聴かせてくれた人が、ひとりいた。
きっと会場の誰もが同じように感じただろうと思われるほど、
キラリとしていた。
見知らぬ人の演奏を聴くときは、
少なからずこちらも緊張するものだけれど、
彼女の歌唱がはじまってすぐに、そのような隔たりは
雲が風にさらわれるように消えて、
虹を渡って新天地へ運ばれるように、魅了された。
どのような筆圧も筆跡も感じられない、
安々と自然に奏でられたような歌唱に、おのずと拍手は熱くなる。
たとえば天性の歌手は、どんな曲でも
魅力的に歌うことができるのかもしれないと思ってしまう。
スペイン音楽コンクールは、
同日にギター部門、ピアノ部門、ヴァイオリン部門も開催され、
夜には結果発表と表彰が行われたよう。
結果を見届けることはできなかったけれど、
7名のすべての歌手の歌声と、それから、
中山美紀さんの人を幸せにする素敵な歌唱を
聴くことができてよかった。
大きな拍手をおくります。