佐賀町日記

林ひとみ

ゆきがふる

今日は東京に雪が降っている。

朝方から粉雪が降りはじめ、しばしの休止をはさみつつ、

ぱらぱらと、ときおり本格的に舞ったりと、

表情をころころ変えながら、空はいつになく、

ライトグレーの分厚い雪雲に覆われている。

 

今季の東京の初雪は、

気象庁の発表は1月12日だったけれど、

1月6日にもかすかに白いものがちらついたのを、

父と甥っ子と車からみてはしゃいだことを思い出す。

3歳半だからそう聴こえるのかうまく言えないのか

「ゆち?ゆち?」といっていた。

 

今日はあたり一面真っ白とはいかないが、

街路樹や家屋や車の屋根の上などに、

また身近では植木鉢の土や植物の葉の上に、

ベランダの木製のバーのうえにも、うっすらと積もっている。

土曜日ということもあり、町全体がひっそりと静かだ。

雪を見るとふわっと力が抜けるような、

ほっとニュートラルな気持になるのはなぜだろう。

 

そんな寒い日にはあたたかいものが食べたくなる。

昨夜、黒豆を水につけて戻しておいたので、

火を入れてお汁粉にしよう。

お餅は食べごたえのある玄米餅で、

甘味は身体を温める作用のあるてん菜糖でつくろう。

 

人間と同じように、

今日は鳥たちも寒さに堪えているようで、

いつもより頻繁にベランダにやってきては、

パン切れを食べている。

常連のスズメ・ヒヨドリイソヒヨドリ・ハトたちは

我先にと競っているけれど、力関係がはっきりしているようで、

そうでもないようなところが面白い。

たとえば1対1だとハトが大きさでものをいうけれど、

スズメが集団になると尻込みしたり、

ヒヨドリとはお互いを見合っているようなところがあったり。

みんなに恐れられているイソヒヨドリも、

死角なのか鈍感なのかハトがうっかり近寄ると踵を翻したり。

また個体差もあって、要領のいいスズメがいたり、

いつももたもたして食べ損ねるスズメがいたり、

そうかと思うと、口にひとつ咥えているのに、

もっと欲しいのか、もうひとつ咥えようとして、

咥えているものを落としてしまうスズメがいたりと、

なんだか人間をみているようで可笑しい。

 

節分と立春を過ぎて、

ずいぶんほかほかとした日があったけれど、

月の満ち欠けと連動している旧暦/太陽陰暦では

今日は1月5日のようだ。

 

暦によって時が微妙に変化して感じられるから、

いろいろなツールをもって現実を認識することは、

ひとつの豊かさにつながると思う。

 

たまにだからか、

ゆきがふって、うれしいな。

 

詩 ゆき
銀座ウエスト|ゆき|風の詩バックナンバー