佐賀町日記

林ひとみ

詩 あくび

夜中

空気洗浄機が歌を唄っていた

 

平和を愛する人間以外は

滅ぼしてしまえ!

 

あまりにも人間的な

なぜって そう

空気洗浄機は人間がうみだしたのだもの

 

力への愛だったのか

愛の力だったのか

 

人々はそれぞれに

意識と無意識で満たされている

 

健全なものが好きといって

サルバトーレ・シャリーノを聴く

 

さっぱりしたものが食べたいといって

カツカレーを食べる

 

理想を語り

戦争を始める

 

人間がすこし

わかったような気がした

 

ある日の朝

 

大気圏にまもられて

息をしている

 

自由 喜び あくび

 

人間が

大気圏をつくれるようになって

 

火星に棲むのは

いつのことだったかしら

 

 

   詩集「おくりもの」2017年より