佐賀町日記

林ひとみ

詩 クリスマス

街を歩く

 

灰色の天幕に

 

演出された

 

聖なる日を行く

 

ひとり

ふたり

さんにん

 

群衆へ告げる

 

拡声器の福音

 

イエス・キリスト

わたしたちの罪の犠牲となられたのです

 

悔いあらためるは幸いの者

 

神の国は近づいています

 

銀色のスーツケースが

むかってくる

 

スニーカーの

右と左が入れちがう

 

飾りつけられた

 

冷たい風が

耳の穴をとおりぬける

 

目と鼻から

 

体温が交差点へながれだす

 

がらごろがらん

ちりりりりーん

 

福引をまわす音

 

鳴らされた鐘の音が

 

渋滞する

 

神の子羊たち

 

うれしそうに

かなしそうに

 

捧げられた

 

あたたかそうな

おびえたような

 

秘跡を着ている

 

ぴかぴか光る

赤と緑

 

贈物のかたちをした

あらゆるものをかかえて

 

夜へといそぐ

 

眠ることを忘れた

 

夢にひらかれた眼には

 

それはそれは美しい

 

リボンがかけられている

 

およそ今夜

 

神の国は近づく

 

おわりからはじめまで

 

すでにそうである国が

 

やってくる

 

やってきている

 

とこしえに