佐賀町日記

林ひとみ

詩 こおり

水たまりに薄い氷がはった

 

指でそっと押してみる

 

息をころす

 

たちまち壊れた

 

ゆらり

 

氷が水のなかに

ちぎれて浮かぶ

 

架空の大陸

 

輝きながら

小さくなってゆく

 

透明な朝

 

カーテンをあける

 

白いカーテン

 

世界に色がうまれた

 

いろいろな色

 

ちりばめられた

 

太陽の光がとびこんでくる

 

射るように

 

闇にひらかれた瞳に

 

あの氷

 

割れていっそう美しい氷が

 

つきささる

 

とけあう

赤と黒

 

冷たい温かい

 

まぶたをむすぶ

 

かたくとじる

 

洞窟にうかびあがる

 

みえない色

きこえない音

 

果てしなく豊かな

 

それはもともと

ひとつのもの

 

高く高く

 

雫はおちる

 

地へ海へ

夜へ言葉へ

 

しみとおる

 

ほうら

 

氷の花が

咲いている