佐賀町日記

林ひとみ

小浜島の朝

数日滞在した、

沖縄・八重山諸島小浜島

 

7時21分の日の出にあわせて、

浜辺へむかう。

 

暗闇から、すこしづつ、ぼんやりと、

世界が浮かびあがってくる様は、神秘的だ。

朝やけの桃色と緋色の光が、

刻々とひろがり、変幻する。

時間を忘れるようなひとときだ。

 

傍らに、夢中で珊瑚をひろっている少女がいた。

空の出来事よりも、白い砂浜に無数にころがるそれらに

魅せられていたのかもしれない。

 

波の音が、遠くから、かすかに届くようで、

心地よいめまいを覚えた。

 

 

自然のなかに、ぽつりぽつりと、

人間が点在し生存する感覚は、

過密な都市や、大規模な組織などの、

群衆のなかで生存するそれとは、

かなり隔たりがあるような気がした。

 

 

南国特有のがじゅまるの木につるされた

ハンモックに横たわり、

樹々の間からのぞく空をみたり、目をつむったり。

ふと地面に視線を移すと、

小柄で華奢なアリたちが、白い砂の粒を、

次々と穴から運び出している。

家をつくっているのだろうか。

 

ある挿話を思い出した。

自然界のアリのコミュニティーでは、

一生懸命働くアリは6割、

あまり仕事をしないアリが3割、

ほとんどなにもしないアリが1割。

労働の効率をあげようと、

その1割のアリを取り除くと、

新たに1割、別のアリがなにもしなくなるという。

 

本当かどうかはわからないが、

いろいろな局面で、

そういうことはあるかもしれない。 

絶妙なバランスで、

それぞれの役割を演じているのではないだろうか。

 

 

無為有為

活動と休息。

 

いれかわり、たちかわり、

わたしたちの命は育まれてゆく。

 

都市に住みながら、

島に暮らすように、

生きれたらいいと思う。