佐賀町日記

林ひとみ

詩 ナナカマド

 

強い雨の音につつまれて

秋の虫の音につつまれて

 

時間がきえる

 

永遠の彼方に

閉じこめられて

 

読まれることを

待っている書物たち

また

書かれざる物語たち 

 

時なき時を

みつけては

 

夢の世界のように

唐突に

不可思議に

大胆に

 

それぞれの

物語をユニークに

うたいはじめる

 

昔話も

神話も

 

ホメーロス

シェイクスピア

 

聖書も

コーラン

 

矛盾や

不調和さえ

 

世界のうちでは

ハーモニーの一部となり

 

いにしえの 

神様同士の喧嘩のような

 

よどみのない

いきいきとした

 

喜怒哀楽に

彩られている

 

ナナカマド

秋の香り

 

カチカチカチと

秒針が

 

世界を一応

ととのえた