佐賀町日記

林ひとみ

クリスマス

クリスマスになると思い出すことがある。

 

社会人になりたての頃の12月の或る夜、

学生時代からの友人たちと集まり

鍋を囲んだことがあった。

 

当時、西荻窪に姉妹と同居していた友人宅に向かう道すがら、

買い出しの袋をさげて、賑やかな商店街を歩いていた。

白い息をはきながら、何気ない会話をしていたのだと思うが、

「クリスマスだからといって、幸せな人ばかりではないよね」

と、一緒に歩いていた友人がふいに言った。

その言葉が、どこか天上的な響きを伴って、慈しみ深いようで、

なんだかとても印象的だった。

 

暖かい鍋を一緒に囲み、大いに語らい、

楽しい時間を共に過ごした友人たち。

 

今から15年近く前のことだけれど、

クリスマスになるとふと思い出す、魔法の言葉だ。