佐賀町日記

林ひとみ

浅間尾根

紅葉のきれいな頃、

東京の檜野原村の浅間尾根/せんげんおねへ

山登りにいった。

 

まだ真っ暗なうちに起きて、

半蔵門線・水天宮駅5:02発の始発にのる。

7:00頃にJR武蔵五日市駅に着き、

山なかまのアキさんと合流。

7:10発のバスで1時間ほど西へゆられ、

8:20には浅間尾根登山口から登り始めた。

予報は曇りで、夕方には雨になるとかならないとか。

7日の立冬を過ぎても、まだ温かい秋という感じで、

30分も登ると汗ばみ、シャツを一枚脱ぐ。

614mの登山口から、908mの数馬分岐まで、

北東へおよそ40分登ると、

あとはひたすらなだらかな尾根の、

歩きやすい山道が東へ続く。

山の深い匂い、紅葉のパレット、

ゆかいな鳥の鳴声、落葉のじゅうたんなどを、

全身で感じていると、だんだん胸郭がひらいて、

呼吸が深くなってゆく。

からだをポンプのように感じる。

サル岩、一本松、人里峠などの目印を確認しつつ、

途中で、ものすごく存在感のある、

おそらくもみの巨木と出会う。

思わず抱きついてみるけれど、

両腕でも半径まで回らない太い太い幹。

江戸時代の頃から、生活や産業を支える

甲州古道として往来のあった道だそうだけれど、

その年月分の叡智や、もしかすると

そのずっと前から生きているかもしれない、

いいようのない存在の確かさ。静けさと厳かさ。

半ばまで来て、小さな浅間神社にて合掌、

10:30頃に浅間嶺の頂に着くと、

紺色のユニフォームの小学年の団体に出逢った。

聞けばお台場から毎週、日の出町などに来ているそうで、

ある女の子はリュックが「7kgで重たくて疲れる」と

楽しそうに嬉しそうに教えてくれた。

それから後はゆっくりゆっくりの下り道、

終着点の払沢の滝入口274mに着いたのは13時頃だった。

12kmを5時間のコースタイムの、だいたいその通り。

おそい昼食のおむすびを食べて、

20分程先にある滝まで足をのばしてみることにする。

 

道すがら、野生の山雀/やまがらの鳥に、

ひまわりの種を餌付けして、

指にとまらせている女の子がいた。

「誰でもできるからやってみますか」といわれて、

ひまわりの種をつまんで掲げると、すぐに、

目に見えない速さで飛んできて、指にとまった。

雀くらいの大きさで、青色の足の爪がけっこう鋭い。

橙色と青灰色のボディのかわいらしい鳥。

危害を加えられるわけではないことを、

ちゃんと知っててやってくる。

みんなカメラをカシャリ。

種を握る指の力をゆるめると、

たちまち咥えて飛び去っていった。

鳥籠のない、自由な関係。

 

払沢/ほっさわの滝は、

とても見応えのあるスケールの大きな滝だった。

滝つぼまでゆくと、水圧みたいなものが

空気を伝わって響いてきて、言葉をなくす。

 

そういう瞬間がとてもうれしい。

それはなぜだろう。