佐賀町日記

林ひとみ

詩 泰山木

もくもく

まっしろ

 

そらにうかぶ

くものような

 

たいざんぼくの

おおきな花

 

まるで

樹上の蓮の花

 

きよらかに

たいぜんと

 

梅雨のすこし前に

咲きはじめる

 

傍らには

しろつめ草

くちなし

あじさい

 

みな

純白のしあわせに染まる

6月の花嫁のよう

 

露にぬれて

時がとまったような

瞬間を愛しんでいる

 

わたしたちは

時計やカレンダーが

なかったら

 

なにをどうしていいか

たちまち

わからなくなるけれど

 

あなたたちは

うらやましいほど

ぴたりと

 

惑星とともに

鼓動している

 

気がかわったり

まちがえたりは

きっとしない

 

だから 

いつもきまって

 

梅雨のすこし前に 

咲きはじめる

 

たいざんぼくの

おおきな花

 

ぼってり

ふっくら

まっしろい

 

ほうら 

しあわせの

香りがする