佐賀町日記

林ひとみ

詩 そら

木立のレースにかこまれた

土色のグラウンドに

 

空たかく

たかく蹴りあげられた

サッカーボール

 

その行方をみつめる

3歳のあどけなき少年は

つぶやいた

 

お空がわれちゃうかとおもって

びっくりした

 

そうだ

 

お空がわれたらどうなるの

ときいてみると

 

がらがらがらって

おちてくる

 

という

 

なるほど

神話の世界のように

 

そういうことも

あるかもしれない

 

わたしたちの

意識や認識は

 

ともすると

小さなおもちゃ箱に

 

都合よく

おさまりがちだけれど

 

ときには

よろこんで

 

少年のちいさくて

ひろい空のように

 

音をたてて

こわれてゆくのです

 

がらがらがらと

 

すると

どこからか

 

あたらしい

力がわいてきて

 

もくもくもくと

 

駆けだしたくなるから

ふしぎなのです

 

ひろい

ひろい空へ向かって

 

サッカーボールと少年が

はじけるように

 

駆けだすように