佐賀町日記

林ひとみ

パンつくり

日に日に春めきつつある如月も後半、

空気の乾燥もずいぶんやわらいで、

夜半に空高くのぼった月は、この時期ならではに、

ぼんやりと霞がかった光が幻想的だった。

 

そんな或る日、お店で酒粕をみつけて、

思い出したようにひさしぶりに

酒種酵母のパンをつくった。

 

夜に生地を仕込んで、

翌朝にきちんと発酵しているかどうか、

わくわくしながら鍋の蓋を開けると、

生地も香りもふっくらとふくらんでいて、うれしくなる。

そしてそのままホーロー鍋を火にかけて、

どうかパンが美味しく焼けますようにと祈るばかり。

 

家族曰く「中世の修道院のパン」だそうだけれど、

もっぱらプリミティブに、

塩とオリーヴオイルで食べるのがすきだ。

もぐもぐむしゃむしゃ、とても美味しい。

また材料もごくシンプルなので、

小麦の種類や銘柄を変えると、ずいぶんと様子も異なり面白い。

たとえば全粒粉はミネラルや微量栄養素をもれなく摂取できるし、

複雑な味わい深かさが魅力だけれど、生地の膨らみが控えめだったり、

ちょっとごわごわと食べにくいこともあるので、

その精製具合とか粉の配合などを、あれこれと試して楽しんでいる。

といってオリジナルのレシピを考案したいのではないから、

ほんとうに気まぐれに行き当たりばったり、というのがすきなのだ。

 

木の芽時を間近に、植物を倣ってか、

心なしか身体がむずむずしているここ数日。

私たち人間も生き物のなかまとして着々と、

春仕様へと支度をしているのかな。

 

 

 

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