佐賀町日記

林ひとみ

図書館

図書館がすきでよく利用する。

 

詳しく調べたい事柄があるときは

蔵書検索のデーターベースがとても便利だし、

区内に在庫がないときは

他区の図書館から取り寄せて借りることもできるし、

新しい世界を求めているとき、

あるいはなんとなく、

なにかと近所の区立図書館に足が向く。

 

時には書店へ行き、

最新の風にあたるのもわくわくするけれど、

特に大型の書店へゆくと眩暈がして、

気持ちわるくなくなってしまうことが時々ある。

すきな本に囲まれているのにうらはらだけれど、

エネルギッシュかつ圧倒的な情報量に、

キャパシティーオーバーになってしまうのかもしれない。

 

また古本屋さんでの

ランダムな本との出会い方や、

店主が采配をふるうユニークなレイアウトも楽しい。

 

本屋さんと図書館は本質的に異なるので、

くらべることはできないけれど、

わたしの場合、図書館へ行くと

たとえば家に帰ったように、なんともほっとするから不思議だ。

子どものころ、

近所に私設の「柿の木文庫」という

本を貸してくださる有志のお宅があって、

絵本を借りによく通ったことが思いだされるけれど、

わたしにとって図書館というサンクチュアリは、

そのような原体験とも結びついているのかもしれない。 

 

ところで図書館の本はすべて

ビニールコーティングされているけれど、

汚れていたり黒ずんでいたりするので、

わたしは借りてくるとまず表面をひと通り、

電解水やメラミンスポンジでクリーニングする。 

するとずいぶんピカピカになるし、

色々な人が触っているのも気にならなくなり、

家で気持よく読むことができる。 

あるいは神経質と思われるかもしれないけれど、

同じように感じている人も多いのではと思いつつ、

借りた人が本を簡単にクリーニングできるようなグッズが

図書館にあったら便利だなと、いつも思う。

 

本は人にとって、

空気や水や食物と同じように、

栄養なのだと思う。

 

そろそろ梅雨もあける頃だろうか。

しとしとと雨の降る静かな日に

いつもより人気の少ない図書館で本の匂いにつつまれたり、

湿気を含んだふにょふにょのページをめくるのも、

季節ならではの味わいかな。