佐賀町日記

林ひとみ

ローズマリー

ベランダのローズマリー

ひとまわり大きな鉢に植え替えた。

 

株分けから5年ほどたち、

どことなく元気がないようにみえたので

植え替えてみると、鉢の中でびっしりと

とても窮屈そうに根を張っていた。

乾燥や寒さに強く、手のかからない

ローズマリーの生命力旺盛ないでたちに対して、

その根が糸のように華奢であることを

はじめて知った。

 

また、自然にまかせるままに

アンバランスに斜めに伸びていた枝を

まっすぐになるよう角度を調整して植え直したので、

心なしかすくっと気持ちよさそうだ。

 

ローズマリーは、 

地中海沿岸を原産とするシソ科のハーブで、

スープやパスタなどの料理にはもちろんだが、

リンスやスキンローションの一部としても

みずみずしいそのエッセンスを分け与えてくれる。 

 

たとえばせっけんで洗髪したあと

指どおりをよくするため、

ローズマリーを漬けたお酢でリンスをすると

なめらかになり、ふんわりと仕上がる。

 

また、ローズマリーを煮出し

グリセリンを加えたローションは、

洗顔後の肌にさっぱりとなじみ心地よい。

冬季には、かぼすやゆずの種を浸水させた天然のジェルを重ねれば

乾燥にも効果的だ。

 

なにかとお世話になっているローズマリー

いつも今年もありがとうといいながら、

植え替えが終わったころにはすっかり日も暮れ、

藍色と橙色のいりまじった夕空がとても美しかった。

すると、青と赤のボディが印象的なイソヒヨドリ

すぐそばまでやってきて、ヒトを警戒するそぶりもなく、

ベランダのバーにしばらく留まっていた。

まるでローズマリーの木の精がお礼に来たような、

ささやかなうれしいひとときだった。