江戸の蒸しそば

先日、アンテナショップ・ふくい南青山291で、

そろそろ新物に切り替わるタイミングであろう

そば粉の在庫品が半額になっていたので、

丁度よいとばかりに購入し、

江戸時代の蒸しそばつくりにチャレンジした。

 

江戸時代初期頃に普及したといわるそば切りだが、

当初は製粉および製麺技術の素朴さゆえに

ぼろぽろと切れやすく扱いにくかったことからか、

現在のように茹でるのでなく、蒸して調理されていたそうだ。

「せいろ」という呼び名はその名残であるという。

 

そばの生麺を作るのははじめてだが、

うどんは何度か簡易に作ったことがあったので、

同じような要領で、

そば粉と水を適当に、様子をみながら手で混ぜ捏ね、

10分ほど寝かせ生地を落ち着かせてから

打ち粉とともに麺棒で薄くのばし、

二つ三つに折り畳んで包丁で切り、

半分を茹で、半分を蒸して、食べ比べてみた。

 

幅もまちまちで、ごわごわと、

全体的に田舎そばのように太めだが、

どちらもなかなか美味しく食べることができた。

茹でたそばは、ほどよくコシが立ち、

風味をバランスよく味わえた一方、

そば湯はさらりとした淡泊なものになった。

蒸したそばは、むちもちとした食感と、

濃厚で力強い味わいが印象的で、

栄養素が茹で湯へ流出しにくいことも

関係しているのかもしれないと思った。

表面の打ち粉もそのままなので、

ざらっとした舌ざわりが新鮮で不思議だった。

 

アウトレットのそば粉ではあったが、

石臼引きの、挽きぐるみ/全粒粉という

そば粉の個性を存分に楽しめた、ゆかいな実験だった。

 

甲乙つける必要もないが、

茹で時間に3分ほど、蒸し時間に15分ほどと、

調理時間やそのエネルギーにやや差があることや、

食べなれているせいもあってか、

再び作って食べたいと思うのは茹でそばだった。

たとえば、そば粉を用いたお団子やお饅頭のようなものを

蒸して調理したらむっちりと美味しいだろうと想像した。

 

時代とともに、

つなぎに小麦や山芋や海藻などを用いて、

細くしなやかに仕上げられた

現在では一般的で当たり前なそば切りだが、

江戸時代の人々は、

次第に洗練されてゆく麺の細さやその食感に

大いに感嘆したのではないだろうか。

 

あらためて新物のそば粉でつくってみよう。 

達人のようにはいかなくとも、春と秋、

それぞれの季節の味を感じられたらうれしい。