「ジュリア・マーガッレト・キャメロン展」を
三菱一号館美術館で観た。
ジュリア・マーガレット・キャメロン/1815-79は、
イギリス領であったインドのカルカッタに生まれ、
英国の上層中流階級の社交生活を謳歌するなかで
1863年にカメラを手にし、独自の芸術的表現を探求した写真家だ。
彼女の生誕200年を記念して
ヴィクトリア&アルバート博物館が企画した本展は、
6か国にわたる国際巡回展であり、日本初の回顧展ということで、
オリジナルのヴィンテージプリントを含む
約150点の写真や書簡などで構成されていた。
独学で発展の途上にある写真の技術を習得したJ・M・キャメロンは、
記録媒体としての写真の役割を一歩進めて、
彼女の言葉でいう「ハイ・アート」の表現を試みていることが特徴的だ。
身近な人物や著名人をモデルとした内面を写し撮るような肖像や、
敬虔なクリスチャンという信仰心が反映された聖母子のモチーフ、
往年の絵画や神話を題材としたファンタジックな作品には、
ソフトフォーカスによる実在のゆらぎや、
当時のモノクロの淡い画質が神秘的で、とても優美だった。
会場の三菱一号館美術館は、
イギリス人建築家ジョサイア・コンドルの設計による
日本初のオフィスビルを2010年に復元した建物で、
オリジナルは1894/明治27年に竣工、
老朽化のため1968/昭和43年に解体され、
その際に保存された部材を一部再利用するなど、
細部にわたり、かなり忠実に復元されているそうだ。
とはいえ、2~3階にまたがる展示室は現代的な空間に整えられ、
当時の面影をもっとも感じさせるのは、
赤みのあるレンガ造りの外観と、
かつての銀行営業室を転用したクラシックなカフェだろう。
作品保護のために20℃に管理された展示室の空調で
冷えた身体を温めるべく、
ハーブティーを飲みながら軽食を待っていたが、
いっこうにサーブされないので尋ねてみると、
どこかのタイミングで伝票が行方不明になり、
注文は消滅していたようだった。
それもまたおとぎ話や魔法のようで面白く、
たとえば、どこでもドアのように、
よく似ているけれど、微妙に異なる別の現実に
シフトしたのかもしれないと、
イマジネーションで遊んでみる。
不思議だが、印象的な、