展示 アルテピアッツァ美唄 | 安田侃

8月の終わりに、北海道の美唄/びばいにある、

彫刻家・安田侃のホームグラウンドのひとつの

野外彫刻公園・アルテピアッツァ美唄へ行った。

 

札幌から北へおよそ60km、

JRの特急電車で35分ほどの美唄市は、

1913~73年に有数の炭鉱都市として栄えた町で、

JR美唄駅から約5km、バスで20分ほどの道のりを

山間部へと辿った終着点に、

かつての三菱炭鉱住宅の跡地を再生したアルテピアッツァ美唄はある。

その日は雨で、深緑の山々に霧がたちこめていた。

 

1945年に美唄市に生まれた安田侃/やすだかんは、

大理石やブロンズを用いた、抽象的でどこか神話的なフォルムの、

量感のあるパブリック作品を広く手掛けている彫刻家だ。

大理石の名産地である北イタリアのピエトラサンタを拠点に

とくにイタリアと日本で活躍する作家だが、

東京の庭園美術館やミッドタウンや国際フォーラム、

渋谷区文化総合センター大和田、トルナーレ日本橋浜町

香川県直島のベネッセミュージアムや、

札幌駅やコンサートホールKitaraなどの、

存在感のある、場と響き合う作品が印象的だ。

 

イタリア語で芸術広場を意味するARTE PIAZZA BIBAIは、

1992年の開園以来、少しずつ創り続けられているプロジェクトで、

現在は彫刻作品が大小40点ほど、

野外と屋外に半分ずつ展示されていた。

よく整ったなだらかな緑の丘に点在する彫刻は、

どれも思わず触れたくなるような優美さで、

観ていると無心になる。

足元には、芝生に混じってクローバーやオオバコ、

タンポポに似た黄色い花が愛らしく、

蝶やトンボが楽し気に飛び交っている。

広場の奥の森のなかにも作品が展示されているようだが、

入り口に「熊に注意」のアナウンスボードがあり、

鬱蒼とした森のなかは雨のためにほとんど人影がなく、

どうも人の領域ではない気がして、引き返した。

また、木造の旧小学校校舎と体育館が展示空間として再利用され、

その山小屋風の赤い屋根が、あたり一面の緑によく映えて朗らかだった。

 

めずらしく北海道に台風が上陸するとかしないとかで、

次第に雨足が強まり、

工房を備えた小屋の一角にあるカフェでひと休みする。

雨の音と、鳥の声、緑のにおいが、心地よい。

ログハウス風の屋内には人がまばらで、とても静かだ。

 

どこかなつかしさを覚えるような、

いつまでもそこにいたいような。

またいつか、幾度でも訪れたい、

雨の降りしきる、豊かな秋の入り口だった。