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大久保混声合唱団 第40回定期演奏会

大久保混声合唱団の第40回定期演奏会

勝どきの第一生命ホールで聴いた。

 

ほぼ満員の客席は、創立59年という合唱団の

厚みのある歴史を物語っているかのようだ。

演奏会は4つのステージで構成されていたが、

とくに後半のふたつのステージを楽しく聴いた。

 

明るい歌声と、白を基調とした衣装が清々しい前半から

休憩をはさみ、後半の「近代日本名歌抄」は、

大正から昭和初期に親しまれた歌謡曲や童謡を

信長貴富/のぶながたかとみが編曲した作品群だ。

本ステージでは「あの町この町」「宵待草」「ゴンドラの唄」

「青い眼の人形」「カチューシャの唄」が演奏されたが、

リラックスした、のびのびとした歌唱に心が和む。

様々な実人生が集い交わるアマチュアの合唱団の、

歌うことを生業とした歌手たちには持ち難い

ある種のリアルさを演奏から感じることができ、有意義だった。

鮮やかな編曲により新しい息吹が吹き込まれた大衆歌は、

黒澤明の映画「生きる」の「いのち短し 恋せよ乙女」とは異質の

明朗な歌として印象にのこった。

 

最終ステージでは、

1983年生まれの作曲家・面川倫一/おもかわのりかずに委嘱された

組曲「サムのブルー」が初演された。

朝日新聞折々のうた」で広く知られる詩人・大岡信

若かりし頃の、宙を舞うような熱気あふれるテキストに寄り添った、

骨太でまっすぐな、衒い/てらいのないサウンドという印象だ。

作曲家が合唱団を理解し、その仕事に誠意を注いでいること、

合唱団が作品を愛し、大切にしていることが伝わってくる

幸福なコラボレーションだった。

 

新しいものがあちこちで、次々とうまれている。

それらが、破壊ではなく建設を、

疑いではなく肯定を、悲しみよりも喜びを希求する、

純粋で強度のある創造であると、しあわせだ。

 

そろそろ、今年も蝉が鳴きはじめた。

夏の名歌手たちは、

どんな夢をみてその歌を奏でるのだろう。