佐賀町日記

林ひとみ

乾徳山

ベランダのなわしろぐみの花が満開だ。 クリーム色の小さな花。 どうして知るのか蜂が集まってきて、 盛んに密を吸っている。 なわしろぐみのはちみつは、どんな味だろう。 いろいろな種類の蜂がいる。 小さいの、長細いの、黒くて大きくて強そうなのも。 先…

人新世の資本論 | 斎藤幸平

10月も中旬をすぎて、 急に寒くなってきた。 からだがびっくりして、 セーターをひっぱりだして羽織ったり、 昨冬の残りのカイロを貼ったり。 朝と夜は、冬の気配につつまれて、 空気が澄んで、星がきれい。 ウイルスもだいぶ落ちついてきて、 東京でも日に1…

詩 たんぽぽ

生花が 造花に 造花が 生花に みえる瞬間がすき うそが ほんとうに ほんとうが うそに ひらかれている優雅 運動は 静止を 静止は 運動を 身ごもっている なぜだろう 何もない 空っぽって 安心する 鼓動と体温を 信じられる やがて 人間がAIに AIが人間に 接…

詩 木犀

金木犀の 花の香りがする あなたどこにいるのですか とあたりをみまわす もういいかい まあだだよ 金色の かくれんぼ 銀木犀の 花が咲いている わたくしここに相います とほほえんでいる きっとだれかが みつけてくれる 銀色の にらめっこ

金木犀 独白録 遺言

金木犀の花が咲きはじめた。 図書館への道すがら、 歩いていると香りがして、あたりを見廻す。 あ、あそこに、と、あらためて近くへ寄ってみる。 深呼吸する。 まあるい香り、金木犀。 いまさらだけれど、 「昭和天皇独白録」を読んだ。 日中戦争をふくめた…

8月尽 2021

今日で8月も終わる。 お盆のころには ウイルス感染の第5波がピークに達し、 変異したデルタ株へのあらためての慎重さを迫られた。 1年遅れの東京五輪2020も開催されたが、 パンデミックの最中、 1964年の成功体験とはまた別の、 賛否両論のある大会だった。 …

76回目の終戦日

今日は76回目の終戦日。 数日前から雨が降り続いて、肌寒い。 空は灰色の厚い雲に覆われている。 朝なのに、夕方にみたいに薄暗い。 お盆に入ってすぐ、 DVDで「東京裁判」を観た。 講談社の企画・制作、 小林正樹監督のチームが5年がかりで、 1983年に完成…

みずがき山

今年の梅雨明けは7月16日頃だった。 ちょうどその頃、 山梨県北杜市に位置する瑞牆山に登った。 前日の現地入りで、 中央線をひたすら西へ向かう。 八王子、高尾、大月、甲府を順に通過する。 都市から遠ざかるにつれて、 太陽のエネルギーを強く大きく感じ…

地球交響曲 第九番

7月5日、今年はじめて 上野でせみの鳴声をきいた。 梅雨らしい湿度の高い日が続き、 涼しいような、蒸し暑いような。 何年も土のなかに生きるセミにとって、 地上へ這い出すのは一種のカタルシスだと思う。 ところが一番乗りでまだ仲間が見当たらず、 あれ?…

夏至 山登り 〇

6月21日の夏至は、風の強い日だった。 大きな樹の下で葉擦れの音を聴いた。 いつも賑やかな鳥の鳴声のかわりに 葉っぱの合唱が、ざわざわ、ざざー、ざざー。 東京は3度目の緊急事態宣言から除外され、 まん延防止等重点措置へと移行された初日だった。 とく…

くちなし 散骨 半藤さん

ベランダのくちなしの花が咲いた。 楕円形の蕾をみつけたと思うと、 6枚の花弁はたちまちひらいて、 2日ほどであっさりと散ってしまう。 こってりとした香りが漂っている。 5日に咲きはじめて、あっちむいてこっちむいて13花。 6/7の東京新聞と、6/8の日経お…

武器としての「資本論」 | 白井聡

ベランダの鉢植のミントがものすごく元気だ。 北海道美唄のアップルミント。 20㎝くらいのものを3本摘んで、よく洗い、 ティーポットにくるりと巻いて入れて、熱湯を注ぐ。 10分ほど蒸らすと、淡い黄色のきれいな フレッシュハーブティーができた。 よい香り…

立夏 黒鯛 公衆電話

今日は立夏、夏が来た。 また端午の節句、こどもの日でもある。 すこしまえに柏餅をいただくと、 柏の葉のほんとうにいい香り。 そして一年前と同じく緊急事態宣言中の連休だ。 ウイルスの変異株の流行がつづいている。 昨年は隅田川の両岸に びっくりするく…

図書館 湿度 のど

3度目の緊急事態宣言が発令された4月25日。 東京・京都・大坂・兵庫の4県に、 幅広い休業と時短営業、酒類の無提供、無観客開催など、 人の流れをとめることを目的とした措置が要請された。 1度目よりは緩い、2度目よりは強い制限だ。 さいわい図書館は開館…

若葉 鳩 サンゴ

新年度がはじまった。 樹々の若葉がきらきらと光っている。 近くの清澄公園の藤がたわわに咲いている。 子どものころ住んでいた家の軒先の藤棚を思い出す。 何度よじ登って遊んだろう。 花をほとんどみていなかったけれど、 いま見ると、ほんとうにきれい。 …

さくら 2021

ベランダのさくらの花が ふたつ咲いた。 ものすごく小さい5mmくらいの花だ。 おととしのびっくりするくらいの花の数から一転、 昨年はひとつも咲くことなく、 今年はふたつ咲いた。よかった。 生きているから毎年ちがう。 人のからだも毎日ちがう。 そういう…

春分 2021

今日は春分の日。 季節が入れ替わり、風がふきあれる春。 右へ左へ、前へ後ろへ、上へ下へ。 揺られて中心の感覚がなんとなく朧だ。 わたしの中心。 東京は14日に桜の開花が告げられた。 九段の靖国神社の染井吉野。 桜並木や群生はそれはそれは見事だけれど…

罪の天使たち

ロベール・ブレッソン監督の長編第一作品 「罪の天使たち/Les Anges du péché」/1943年をDVDで観た。 修道院を舞台とした、たましいの救済の物語は、 罪を犯して世間から逃れてきた娘たちと、 信仰のために世俗をすてた娘が出逢い、 院長や副院長などを巻…

春がきた

今日2月3日は立春だ。 透きとおる春の日ざし。春がきた。 立春は4日か5日のことが多く、 3日というのは124年ぶりだそう。 1897/明治30年というと日清戦争のすぐあとだ。 当時の帝国日本は朝鮮半島などの領土をめぐり、 衰退に傾きはじめた清王朝に勝利し、 …

1月のおわり

2021年の1月が今日でおわる。 ひととき雪の舞った日もあったけれど、 穏やかで暖かいひと月だった。 そして緊急事態宣言中なので、 なるべく家にじいっとしていた。 読みたい本がたくさんあるものの、 読むのがすこぶる遅いので、時間がたりないくらい。 そ…

小正月 2021

今日1月15日は小正月。 旧暦/太陰暦で暮らしていたころの、 年が明けて最初の望月の日にあたる。 小豆粥は食べなかったけれど、 満月のようにまんまるいどらやきを食べた。 新しい年もまた元気に過ごせますように。 今年のお正月はほんとうに天気がよかった…

大晦日 2020

今日の太陽の光は ほんとうにきれいに透きとおっている。 朝、目が覚めて、 世界がきらきらと光っているようだった。 太陽は今日が 大晦日だということを知っているのだろうか。 今年はまれにみる不思議な年だったけれど、 よく一年間がんばりましたね、 ま…

自然教育園

いちだんと寒くなってきた12月中旬、 目黒の自然教育園を散策した。 またじわじわとウイルスの流行が拡大するなか、 活動しづらくもどかしい日々が続いているので、 自然のなかで深呼吸したくなったのだ。 寒くないように、重ね着をして、足首にカイロを貼っ…

ホモ・デウス | ユヴァル・ノア・ハラリ

イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリの 「ホモ・デウス」/2018年河出書房新社を読んだ。 前著「サピエンス全史」で辿った人類の来し方につづき、 その行き方の可能性を提示する、上下巻にまたがる大作だ。 「HOMO DEUS : A Brief History of Tomorr…

ふゆ たべる くじら

11月も終わりに近づき いよいよ冬らしく寒くなってきた。 朝6時はまだ暗く、 7時ころにようやく明るくなる。 あんなに明るかった朝が、こんなに真暗になるかのと、 季節の推移に、毎年のことながら驚く。 地球はおよそ23.4度傾きながら公転している。 それは…

もみぢ なわしろぐみの花 2020

11月のはじめはオリンピックのような 4年に一度のアメリカ大統領選挙で ざわざわしていたけれど、 7日の立冬をこえて、 暦を追うように秋も深まってきた。 ベランダのなわしろぐみの花は、 昨年よりひと月ほど早く、10月に入ると咲きはじめた。 小さな無数の…

シューベルトのます

穏やかな秋晴れがつづき、 空にひろがる雲のかたちが楽しい10月。 うろこ雲、ひつじ雲、すじ雲、 それから、うさぎ、くま、くじら、龍、など いろいろな形をみつけて遊ぶ。 5歳の甥っ子に、 「ほら、あそこにお魚さんが2匹いるよ」と いってみるが、よくわか…

髪をきる

長く伸びていた髪の毛を切った。 10年近く構わずに、 伸ばしていたというより、伸びていた髪。 最後に理髪店を利用したのはいつだったろう。 6年程前に、ヘアドネーションのことを知り、 いつか参加してみようと思っていたのが、 忘れたり思い出したり忘れた…

マイナンバー がんばる

総務省の発行するマイナンバーカード。 ひとりにひとつのIDカードだけれど、 2015年に番号通知のカードが届いて以来、 特に必要性を感じなかったので、そのままになっていた。 新型コロナウィルスのための ひとり10万円の特別支援給付金のIT申請では、 マイ…

オラファ―・エリアソン ときに川は橋となる

残暑のはげしい9月のはじめに 東京都現代美術館の企画展 「オラファ―・エリアソン ときに川は橋となる /Olafur Eliasson Sometimes the river is the bridge」を観た。 COVID-19の騒ぎがあって以来、 はじめて行くことができた展覧会だった。 江東区木場公…